【社長通信】耕すということ


10月も半ばというのに暑い日が続いている。30℃以上の真夏日が10日を数え異常気象そのものです。

雨も少なくわが家の畑は異常乾燥。10月初め蒔いた種もようやく芽を出し、せっせと水遣りをした成果とひとまず安心。これからは朝夕の見回りが日課となる。

大根やカブ、白菜やキャベツ、ホウレン草や小松菜とそれぞれの生育具合を確かめつつ収穫の日を待つ。この見回りに野菜はきちんと応えてくれる。それが耕すということか。


さて、新聞の文化欄で「農業は土を耕し、芸術は精神を耕す」という言葉に出会った。

つまりカルチャー(文化:culture)はアグリカルチャー(農業:agriculture)から生まれた、という。食物と芸術があってこそ人間が人間らしく生きられると演出家は言う。

私は耕運機で土を耕しているときや草刈機で勁草と格闘しているとき、心は空である。いろんな問題を抱えているときなどは気分転換となり、沈思黙考するなかでヒントが得られることもある。これぞ、アグリカルチャーである。


実りの秋、先日、今年の米の作柄が新聞で報じられていた。

それによると東日本は天候に恵まれ良か、やや良とのこと。それに対し西日本は生育期の日照不足と大雨により不作とのことでした。

米の本場、山形は庄内生まれの私はなぜか米価が気になる。子どもの頃はおいしい米の上位に「ササニシキ」があり、誇らしく思っていた。今年の米価のトップは相変わらず新潟「魚沼産コシヒカリ」で卸間価格19250円(60㌔)、次は同じく新潟「一般コシヒカリ」で13500円。

山形産「ひとめぼれ」は残念ながら10000円と下位に甘んじる。

ここ数年高価格を狙って新興のブランド米の進出も著しい。新潟の「新之助」、富山の「富富富(ふふふ)」、宮城の「だて正夢」などネーミングも奇抜でいまの時代を感じさせる。因みに「新之助」は15200円、「富富富(ふふふ)」は14500円、「だて正夢」は14300円という。

コロナ禍により外食から中食へとシフトする中で消費量も落ち込んでいる。そこで当然価格競争も激しく、販売量を増やすための値下げも起きている。もちろん家で食べるなら多少値が張ってもおいしい米を食べたいという人も多いようだ。


ところで、緊急事態宣言下で酒の提供が夜8時までとの規制が酒に関わる業者に大きな打撃を与えている。居酒屋をはじめ酒を提供する店。酒の卸売会社、酒造会社、酒米の「山田錦」を生産する農家。「山田錦」は各酒造会社と栽培契約を結んで計画的に生産するので、その数量は途中では変えられない。また、次年度から減産するなど数量が一定しないと契約が成立しない恐れもあり、双方ともに苦慮していると東広島(西条)の関係者からの声が聞こえてきた。何年か前に訪れた西条の「酒まつり」が懐かしく思い出された。


最後に、いま発表中の今年のノーベル賞について。

コロナ禍の今、世界中で民主主義が危機に瀕し、強権独裁国家が跋扈(ばっこ)し、言論の自由が脅かされている。フェイクニュースが横行する中で真実を追求し、権力を監視するジャーナリズムの真価が問われている。命懸けで真実を伝え続けるロシアとフィリピンの2人のジャーナリストにノーベル平和賞が贈られる。波乱含みの世にあって、平穏な日常を希求する。


代表取締役 加藤慶昭(10月14日記す)

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