【社長通信】Well-being(ウエルビーイング)について
コロナ禍の中で人々の心はささくれ立っているのに、季節は紅葉が青空に映える穏やかな晩秋を迎えている。これから寒さに向かってインフルエンザの流行も心配される中で、新型コロナの感染が拡大している。ウイルスとの戦いに終わりが見えない。なんとも気の滅入る日々である。
さて、わが社の経営理念に「質の高い警備サービスを提供することによって、社会の安全を確保し、すべての人びとの幸せを目指します」とあります。
そして我が社の目的は、警備という事業を通して社会に貢献することです。
毎月発行する社内報の表題「一味同心」とは、同じ目的の下に集まった者が心を一つにすること、そしてみんなが幸福(ハッピー)になること、という意味です。このような生きづらい世の中にあって、最近の論考(日本経済新聞「やさしい経済学」シリーズ)を引用しながら少し深く考えてみたい。
近年、この「幸福」と訳した英語は「happiness」(ハピネス)ではなく「well-being」(ウエルビーイング)という。この言葉は、身体的・精神的・社会的に「良い状態」を表していて、一方の「happiness」は感情的に幸せな状態、つまり短期的な心の状態を表している。
日本国憲法13条に幸福追求権が明記されているように、幸せを目指すことは人類共通の権利といえます。
2021年の世界経済フォ―ラム年次総会(通称ダボス会議)のテーマは「グレート・リセット」です。その意味するところについて創設者であるクラウス・シュワブ会長は「世界の社会経済システムを考え直さなければならない。第2次世界大戦後から続くシステムは環境破壊を引き起こし、持続性に乏しくもはや時代遅れだ。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」と述べている。
また、京都大学の広井良則教授の回によると、人類は拡大・成長期と定常・成熟期を繰り返してきた。
現在の人類誕生から1万年前までの狩猟採集社会、1万年前から300年前までの農耕社会でも、それぞれ拡大・成長期と定常・成熟期がありました。その後は産業革命による拡大・成長期で、現代は第3の定常・成熟期への移行期ではないかと広井教授はいいます。(筆者要約)
幸せに関する研究と重ね合わせて歴史を見渡すと、拡大・成長期は物的な豊かさを目指す時代、定常・成熟期は心の豊かさを目指す時代といえそうです。
第1の定常・成熟期は装飾品や絵画など文化的・芸術的作品が生まれた時代に、第2の定常・成熟期はギリシャ哲学や宗教などが生まれた時代と重なるようです。経済成長は緩やかでも、心の豊かな成長が見られる時代と言えそうです。
「グレート・リセット」は環境・貧困・パンデミック(ウイルス等の世界的流行)等の課題を解決すると同時に、人類が精神面で大きく成長する時代への転換期とみなすべきではないでしょうか。経済成長という価値軸では成長から停滞への転換に見える世界も、心の幸せから見れば停滞から成長への転換とみなせるでしょう。広い視点から人類の生きるべき未来を見通し、幸せ中心社会の意義を考える必要がありそうです。
コロナ後の世界は芸術・文化の成熟する心豊かな時代への転換・・・
示唆に富む論考です。
代表取締役 加藤慶昭 (11月18日記す)
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